民法 制限行為能力者(2)制限行為能力者の種類
前回を軽くおさらいしますと、
制限行為能力者とは何?という説明をしました。
また、人には3つの能力が定義されていて、
その内の1つに「行為能力」というものがあるという説明をしました。
今回は制限行為能力者について説明してきたいと思います。
制限行為能力者の種類
未成年者
未成年者とは成年*1に達していない者です。
ただし、婚姻歴のある者は成年とみなされるため、除かれます。
成年被後見人
精神上の障害により、事理を弁識する能力を欠く常況にある者で、
家庭裁判所の後見開始の審判を受けた者です。
下記の文言は、被保佐人や被補助人で似たような文言が出てきます。
精神上の障害により、事理を弁識する能力を欠く常況にある者
実際の試験問題で「成年被後見人は・・・」と問われる事もあれば、
「事理弁識能力を欠く状況の者」と問われる事もあるので、覚えておいた方がいいです。
被保佐人
精神上の障害により、事理を弁識する能力が著しく不十分である者で、
家庭裁判所の保佐開始の審判を受けた者です。
出てきましたね。先ほどと似た文言が。
今回は「欠く」ではなく「著しく不十分」ので注意してください。
事理を弁識する能力が著しく不十分である者
被補助人
精神上の障害により、事理を弁識する能力が不十分である者で、
家庭裁判所の補助開始の審判を受けた者です。
はい。この文言も大事です。
今回は「著しく不十分」ではなく「不十分」です。
事理を弁識する能力が不十分である者
簡単に表現すると?
まず、未成年者はイメージしやすいと思います。
イメージしづらいのは成年被後見人、被保佐人、被補助人でしょうか。
法律には「事理を弁識する能力を欠く」とか
「事理を弁識する能力が・・・」とか定義されていますが、
初学者の方はイメージしづらいと思います。
法律で定義されている文章をそのまま読んでもイメージできない。
これが法律の難しい所です。
なので、もっと分かりやすくイメージできるようにしました。
種類 | 説明 | 判断力*2 |
---|---|---|
成年被後見人 | ほぼ判断できない。 | 0〜1ぐらい |
被保佐人 | 簡単な事なら判断できる。 | 1〜3ぐらい |
被補助人 | 多くの事を判断できる。 | 7〜8ぐらい |
もう1つ大切な事は、成年被後見人、被保佐人、被補助人となるには、
家庭裁判所の審判が必要という点です。
事理弁識能力を欠けば、必ず成年被後見人になるわけではないので注意が必要です。
なぜ制限行為能力者と分けるのか?
人を差別するのは良くない事ですが、
なぜこのように法律で定義して区別をするのでしょうか?
それは、制限行為能力者を保護するためです。
例えば、10歳の子供(未成年者)が不動産売買をする事になったら、正常な判断が出来るでしょうか?
悪い大人の言葉に騙され、高く買ってしまったり
安く売ってしまったりする可能性もあります。
そういう法律行為をする場面において
保護できるようにした仕組みがこれです。
じゃあ、どうやって保護するのか?保護者を付けるわけです。
イメージしやすい所で言うと、未成年者には親が保護者となります。
ここは文で説明するよりも覚える所なので、表にまとめました。
種類 | 保護者 |
---|---|
未成年 | 親権者、未成年後見人*3 |
成年被後見人 | 成年後見人 |
被保佐人 | 保佐人 |
被補助人 | 補助人 |
未成年者以外は「被」と付いている方が保護される側になります。
どのように保護するのか?
簡単に言うと、制限行為能力者が保護者の同意がない法律行為を行なった際に、後から保護者がその法律行為を取り消す事ができます。
例えば16歳の少年がバイク屋で100万円のバイクを買ってきたとします。
しかし、それを見た親が店に行って「バイクは返すからお金を返してください」と売買を取り消す事が出来るのです。
しかし、全ての行為が取り消す事が出来るかといったらそうではありません。
例外で取り消せない行為があります。
「他人から何らかの権利を無償で得る」とか
「借金をチャラにしてもらう」とか
「日用品(食料等)を購入する行為」です。
要は制限行為能力者に被害が出ない様な行為です。
これらは保護者の同意がなく1人で行う事が出来ます。
ただし、「借金を返してもらう」はお金を貰う代わりに
貸したお金の返済を要求する権利である債権が減るので、
「借金をチャラにしてもらう」と似て非なる行為となり、
保護者の同意が必要です。
では次は保護について細かい所を解説していこうと思いますが、
長くなりましたので今回はここまでにしたいと思います。
まとめ&重要ポイント
今回の範囲の重要ポイントは、
「精神上の障害により、事理を弁識する能力を・・・」の区別です。
多肢選択の問題で1つの肢として出題される事もありますし、
行政書士試験においては記述式で書く事を要求される事もあります。
宅建士試験の場合は、細かい事は問われないかもしれません。ですが、
行政書士試験は「家庭裁判所の審判の開始」をする時に
本人の同意が必要か不要か問われる事もあります。
詳細はお手元の教科書等で確認してみてください。