法律家のたまごの日誌

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民法 制限行為能力者(3)取引の本人、相手方の保護

まずは前回のおさらいです。
前回は制限行為能力者の種類を紹介しました。

制限行為能力者
未成年、成年被後見人被保佐人、被補助人の
4つの種類がありました。

法律的な定義は
「精神上の障害により、事理を弁識する能力を(が)・・・」
「欠く」のか「著しく不十分」なのか「不十分」なのか違いがあり、この法律的な定義は重要なポイントでした。

また、これらの制限行為能力者の保護者となる人たちの名称も紹介しました。

 

今回はその制限行為能力者をどうやって保護するかです。

 

制限行為能力者の保護

原則は後からでも法律行為(取引)を取り消す事ができます。
これは、保護者もそうですが、本人自らが取り消す事もできます。

例を挙げると、未成年者が親の同意なしにバイクを購入したとします。
このバイクを購入するという取引は、あとから親や本人が取り消す事ができます。

さて、ここで注目したいのが「保護者*1の同意の有無」です。
未成年者、成年被後見人被保佐人、被補助人の内、
成年被後見人だけは保護者の同意があっても取り消す事ができます。
逆を言えば、未成年者、被保佐人、被補助人は保護者の同意があった場合は取り消す事ができません。

 

制限行為能力者の相手方の保護

制限行為能力者を保護するというのは、ある程度分かったと思います。
しかし、これでは取引をした相手方は不安定なままです。
先ほどのバイクの例で言えば、
バイクの売主は親から取り消しをされれば、
受け取った代金は返金しなければなりません。
このような状態だと、せっかく受け取ったお金があるのに
次の仕入れなどに使う事ができず、不安定なままです。

なので、制限行為能力者と取引をした相手方には、催告*2という権利があります。
催告とは何かと言うと、
「おたくの息子さんがバイク買ったけど、承諾してもらえますか?」と尋ねる行為です。
親から「いいですよ」と承諾が貰えれば追認*3を得たという事になり、以降その後取引の取り消しができなくなります。

 

ちょっと細かい事を書きますが、
この催告は「1ヶ月以上の期間を定めて」行う必要があります。
要は返事の猶予を1ヶ月以上にしなさいという事です。
これはどういう事かと言うと、
制限行為能力者の取引に対して保護者にする催告は、
保護者からの返事がなければ追認したとみなされます。
そのため、
「返事は今日くれ」と急な予定で催告しておいて、
明日になったから「はい、追認とみなします」では
ダメだという事です。

 

制限行為能力者を保護しないケース

ここまで解説した内容を振り返ると、
制限行為能力者は基本的に保護をした上で、
その取引の相手方が不利になりすぎないような方法があるよ
という内容でした。

最後に解説する内容は、
制限行為能力者であっても保護されないケースです。

どういった場合かというと、制限行為能力者が嘘をついた時です。
法律的な言い方をすると「制限行為能力者の詐術」と言います。

例を挙げると、未成年者が取引をする際に、
「私は二十歳です」と言えば*4詐術に該当します。
この詐術は明確に言うだけでなく、それっぽい言動も含まれます。
判例では以下のような文言で述べられています。

制限行為能力者の他の言動などと相まって、相手方を誤信させ、又は誤信を強めたものと認められるときには、詐術に当たる 

行政書士試験は記述式問題で書かされる可能性もあります。
このフレーズは覚えておいた方が良いかもしれません。

 

民法は基本的に弱者や真っ当な人を保護するような法律です。
ですが、いくら弱者であったとしても、
悪い事をしたら保護するに値しないよねという事です。

 

まとめ&重要ポイント 

今回までで制限行為能力者に関する大まかな説明が終わりました。

制限行為能力者の人に全ての取引を禁止すると不都合が多いので、重要な取引については後から保護者が取り消しできますよ、という事。

取引の相手方は、いつ取り消しされるか分からないままというのは不安定なので、催告という形で保護者の追認(承諾)を得る事ができれば取引が確定しますよ、という事でした。

*1:一律で保護者と記載していますが、法定代理人成年後見人、保佐人、補助人にそれぞれ読み替えてください。

*2:さいこくと読みます

*3:ついにんと読みます

*4:黙っているだけでは詐術に該当しません。